AIは「人の仕事を奪う」敵なのでしょうか?「少子高齢化」「年金問題」「雇用不安」「貧困問題」。将来に不安を抱える私たち現代日本人が、AIとうまく付き合っていくためにセットで考えるべき「BI(ベーシックインカム)」について考えます。
・AIに仕事を奪われないか不安
・少子化や年金問題など将来に不安がある
・年金制度なんかもはや意味ないと思っている若い世代
AIは人の仕事を奪う敵なのか?
ども、とんじるです。ぶっひん。
「AIに仕事を奪われる」「AIでなくなる仕事・残る仕事」など、メディアには一時このようなワードが踊りました。
さすがに最近はこのような一方的な論調は大手メディアからはあまり聞かれなくなりましたが、
インパクトが大きかったせいか、「AI=敵」みたいな印象を多くの人が持ってしまっているような気がしています。
映画「マトリックス」もそんな話でしたよね。
高度に発達した人工知能と人間の戦い。SF映画では昔からあるモチーフです。
こんなマトリックスのような世界がやってくると心配している人はさすがにいないでしょうが、
AIの社会進出を不安視する風潮というのは確かに存在します。
平成30年間の負の遺産
こういった背景には、平成時代約30年にわたる社会的な負の遺産が大きく影を落としていることがあるでしょう。
平成の世の中は、昭和時代に築いた多くの仕組みに不具合が生じ、目に見える形で崩れていってしまった世の中でしたね。
経済
平成はバブルの崩壊から始まりました。1989年(平成元年)の大納会で38,915円を記録した日経平均株価はその後急落。98年には12,879円と最高値の1/3まで下がってしまいました。
山一証券や北海道拓殖銀行が潰れ、大手銀行に1兆円以上の公的資金が投入されたのもこの頃です。
公的資金投入で持ち直したかに見えた2008年。今度はリーマンショックで再び日本の証券市場は大打撃を受けます。
このあと大きな震災もかさなり、平成の間の日本経済は崩れては立て直し、立て直しては崩れのくり返しでした。
少子高齢化
平成の30年間で日本の人口自体はそれほど変わっていません。1989年に1億2321万人だった人口は、2018年に1億2642万人になりました。
数字の面では「あまり変わらない」のですが、注目すべきはすでに日本の人口は「減ってきている」ということです。
そしてさらに問題なのはその内訳。人口に対する高齢者の比率がどんどん上がっています。いわゆる高齢化社会のはじまり。
年金システムの崩壊が叫ばれて久しく、最近でも「老後2,000万円足りない問題」が話題になっています。
人口が減少し高齢者比率が高くなる世の中では、現役世代の負担が大きく、その世代が高齢になった際に受け取れる年金額がどうにも怪しいみたいだ、ということがわかってきてしまったということになりますね。
それを回避するためにはできるだけ「現役」でいてほしい、
からの
「女性の社会進出」であり「生涯現役社会」だったりするわけです。
まあなんと都合のいいはなし
雇用と貧困
少子高齢化社会の問題とも密接につながるのですが、雇用と貧困の問題も大きいですね。
平成に生まれたことばのひとつに「格差社会」というものがあります。
昭和の間の常識だった「一億総中流社会」という価値観が崩れてしまったわけですが、ここまで価値観が変わってしまった背景には、やはりバブル崩壊に端を発する景気の後退の影響が大きい。
バブル崩壊時、日本企業は新卒採用を絞りました。「採用なし」という企業がふえた「就職氷河期時代」ですね。
この時代に高校・大学を卒業した世代は就職することもできずに社会に放り出されました。アルバイトやパートで生計を立てる「フリーター」の登場。
この後この世代は「ロストジェネレーション」ロスジェネ世代と命名されます。
さらに、景気が回復基調になると、採用を控えた企業の労働力不足が顕在化。
そこで政府が行った派遣法の規制緩和によって、企業はリスクを負わずに労働力を確保することができるようになってしまいました。
それが現在に至っており、今では従業員の4割が非正規社員という状況になっています。
非正規社員である理由は人それぞれなため、このデータだけでは一概に問題とはいえないのですが、非正規社員は給与が上がりづらい、社会保障などの待遇面に差があるといった問題があります。
実はロスジェネ世代は、それより上の世代に比べて正規社員であっても給与水準が低いと言われています。
これもすべて平成に起こった不景気と、そこから続くデフレの影響。
企業が利益を出しづらい状況が続いていることで、労働環境が悪化したままだということになります。
これでは子供なんか育てられないですよね。
今や日本の出生率は下がる一方。一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.43となっています。
また、ひとり親世帯の貧困問題も根深く(この問題はまた別の機会に)、雇用と貧困、そして少子化の問題は同じ根っこから生まれてきたものと思えます。
で、からのAIの話なわけですよ
AIを味方にする社会を作る
そんな「絶望的な」社会情勢でAI(人工知能)の発達という話が出てきたわけですから
「AIに仕事を奪われる」と怯えるのもわかる気がします。
実際の話、自動運転の実用化で「運転手」という仕事がなくなるといわれています。
多くのデータを整理してまとめる事務職もそうでしょう。
仮想通貨や電子決済は銀行の存在そのものを問うような存在になるでしょう。
しかし効率化のためにはAIの存在は不可欠。
企業は利益を追求するためにAIやIoT、ロボテックスを駆使した自動化を推進していきます。
得た利益は競争力強化のためにさらなる自動化に予算化され「人件費」はどんどん削減されていきます。
企業の利益が人件費として従業員に還元されないというしくみができあがりつつあります。
ならば、
AIや自動化で得た企業の利益をひとびとに還元する「新しい仕組み」を作ればいいんです。
企業がAIや自動化で得た利益をしっかり国が税金として吸い上げ、それを社会保障として人々に還元する。
「働かなくても」廻っていく新しい世の中。
だって、労働者人口減ってるんでしょ?
死ぬまで働かなきゃいけないって思ってるんでしょ?
子供育てられないんでしょ?
ならば、AIを味方につけて、
お金を稼ぐのは機械に任せて、
人間はもうすこしゆっくり、ゆとりをもって生きましょうよ。
でもそんな都合のいい話。あるんですかね?
ありますよ(まだ実用化されてないけど)
BI(ベーシックインカム)を知ってるか?
「ベーシックインカム」ということばを聞いたことあるでしょうか?
ベーシックインカムとは、年齢・性別・所得の有無を問わず、すべての人に所得保障として一定額の現金を支給する制度のことをいいます。
従来の社会保障と大きく違うのは、すべての人に同じだけの金額を支給するということ。
従来の社会保障制度は、定年を迎えて働けなくなったら老齢年金、企業を退職して収入がなくなったら失業保険、なんらかの理由で生活費が賄えない人には生活保護と、それぞれの目的に合わせて予算管理されています。
一見よさそうな制度に見えるのですが、所得や資格の有無を審査したり手続きが必要だったり、制度があるにもかかわらず広報が不十分なために受けるべき人に保障が行き渡らなかったりといった、役所の手続きの煩雑さからくる問題があるようです。
また、たとえば生活保護受給者が働くと保護を受ける資格がなくなってしまうために、なかなか社会復帰ができない「生活保護から抜け出せない」問題も大きいと聞きます。
では「ベーシックインカム」は、これら従来の社会保障制度と何が違うのでしょうか。
ベーシックインカムのメリット
ベーシックインカムの最大のメリットは、すべてのひとが最低限の所得保障をうけられることで「食うために働く」ことから解放され、本来やりたかったことにチャレンジしやすくなると言われています。
自分の価値で仕事を選べる
最低限の生活が保障されるので、自分で決めた価値で仕事を選ぶことができます。
社会的に必要でありながら待遇が十分でなかった介護や保育の世界、ボランティアやNPOで働く方にとっても活動しやすい環境が揃うと期待されます。
また、ひとり親の家庭でも子育てをしながら自宅でできる仕事を選びやすくなるでしょう。
もちろん「稼ぐ」ことにこだわっても構いません。
自分の生き方に合わせた働き方ができるようになると期待されています。
行政コストの大幅削減
従来の社会保障制度は、その審査や管理のために各市町村の窓口業務に多くの経費がかかっていました。
ベーシックインカムはすべての人に無条件に支給されるものなので、行政コストが大幅に削減できると言われいます。
貧困層の救済
先ほど社会保障制度の問題点としてあげた「保障が行き渡らない」「保障制度から抜け出せない」が解消されます。
すべての人に等しく支給されるので、行き渡らないこともなく、働き出しても支給が止まることはありません。
少子化問題の解消
ひとりあたり7万円の支給額であれば家族4人で28万円。これが少子化問題にも寄与すると言われています。世帯でなく個人に対し支給されるので、子供の多い家庭のほうが支給額が大きくなり、ひいては少子化対策につながるという考え方です。
地方活性化
生活に最低限の保障といっても、その金額は全国一律です。生活コストの高い都会から地方へ移住するという選択肢が増えるとも言われています。
ベーシックインカムの問題点
このようにメリットの多いベーシックインカムですが、問題点はないのでしょうか。
財源
問題点としてまっさきにあがるのが「財源」の問題です。
たとえば日本国民全員に月7万円支給するとなるとひとりあたり年84万円。人口1.2億人として年間100兆円の財源が必要になります。
それを一体どこから持ってくるのか?
現制度での社会保障給付費(年金・医療費・その他の合計)は2015年時点で114.9兆円。
それを全部ベーシックインカムに振り替えてしまえば話は簡単ですが、今の年金生活者は生きていけなくなってしまいます。
年金・医療制度など現行の社会保障の「座組み」を一緒に変えるか、もしくは従来保障も一部残していくのか?
その場合は足りない財源をどこから持ってくるのか。
財源の問題はベーシックインカムを議論する上でもっとも大きな問題ですが、そこにAIによる効率化、生産性アップがうまく寄与しないかなと思っています。
人を雇わないで利益を出した企業に対し、しっかり課税していく仕組みは必要ですね。
働かなくなる?
最低限の生活保障があると、人は働かなくなるんじゃないかと言われています。
「お金を稼ぐ」ことに対する意欲低下が、制度の存続にとって危ういという考えは根強いみたいです。
しかし先日、元大阪府知事の橋下徹さんが「ベーシックインカムは空中ブランコ。落ちてもちゃんとネットで助けてあげるから、みんなしっかり技を磨いてください、という制度」と言ってました。
なるほどな、と思いましたね。
詐欺・搾取
年金の不正給付にあったように、実際には亡くなっているのに給付を受け続けたり、子供に対する給付分を自分たちのためだけに使って育児放棄する「ダメ親」などの問題は一定数出てきそうです。
家族の死の影響
たとえば夫婦ふたりの老人世帯の場合、配偶者がなくなると給付額が半減してしまいます。家族が多い方が有利、の反対側ですね。こういった家族が減ってしまった事態に対しての対処法は考えていく必要がありそうです。
将来の不安
先にも触れましたが、年老いて病気がちになった場合の保障が十分なのかというと難しい部分もありそうです。
医療・介護費用は別枠で考える、などの対策案とセットで考えていく必要はありそうです。
今こそ本格的な議論が必要
さてこのベーシックインカム。このようなポテンシャルを持った構想なのに、なぜ日本の政治家はもっと議論してくれないのでしょうか。
それは与党である自民党と公明党がベーシックインカムに対して消極的だからなのですね。
フィンランドやナミビア、カナダでも実証実験が行われたこともありますが、いまだ導入されたことがないこの制度。
野党には積極的な考えを持っている政治家も多いと聞きますが、いかんせん「絵に描いた餅」の域を出ていないのが現状のようです。
対案としての現実味に乏しいから議論の土俵に上がれないということでしょうか?
そうはいっても昭和のシステムはすでに平成で崩壊しています。
令和の時代は、従来の仕組みを抜本的に見直して
新しい世の中の仕組みを作っていく時代だと、とんじるは思っております。
AIとベーシックインカムに興味が出てきたら読むべき本
AIのこと、ベーシックインカムについて詳しく知りたいと思ったら、関連書籍をいくつか読んでみるのもオススメです。
ベーシックインカムについての啓蒙的な内容で有名な書籍。財源をどうするとか具体的な話はあまり出てきませんが、色々興味深い話が多く、読んでよかったと思える内容ではないかと。
ベーシックインカムを日本に導入した場合の可能性、財源、障壁など、多岐にわたりかなり具体的に考察された良書。オススメです。
ベーシックインカムについてはほとんど何も語られていませんが、AIをうまく使っていこうぜということが、ホリエモンらしいことばで書かれてます。読み易し。
若者よ、選挙に行こうぜ
はっきりいって「ベーシックインカム」は今のシニア層には何のメリットもない話なので、与党はなーんにも言わないんですよ。
だからベーシックインカムを議論の土俵に上げるには、若い世代の政治参加が絶対必要。
「よくわからない」と逃げないで、次の選挙は各政党のマニュフェストをよく読んで、自分の考えに近い人を選ぶようにしましょう。
ちなみにベーシックインカムは「給付付き税額控除」という
むずかしいことばで表現されていることも多いですよ。
選挙、行こうぜ
そんじゃまた。ぶっひん。
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